今回は、オプティカル(光学)式のキーボードについてのお話です。
価格が安く一般向けのメンブレン式・ゲーマーに人気なメカニカル式など、キーボードにはいくつかの種類がありますよね。オプティカル式もその1つで、こちらは最近登場した構造のようです。
正月の初売りセールを覗いていると、「光学式スイッチ搭載!」という聞きなれないキーボードが目につき、気になったので実際に購入してみました。
実はその製品を見かけるまで、光学式のキーボードについて知りませんでした。
そこで今回は、オプティカル(光学)式キーボードの仕組みや特徴について、実際に購入したROCCATの[Vulcan Pro]と併せてご紹介します!
オプティカル(光学)式のキーボードとは? その仕組みや特徴について [Vulcan Pro]
[Vulcan Pro]の製品情報
ROCCATとは
ROCCATは、2007年に設立されたドイツのゲーミングデバイスメーカーです。2019年にTurtle Beachの傘下に入り、現在はROCCATというブランドとして、マウスやキーボードなどを販売しています。
ヨーロッパ圏で人気の高いゲーミングブランドであり、代表的な製品にはキーボードの[Vulcan]シリーズが挙げられます。
余談ですが、創業者のレネー・コルテ(RenêKorte)氏はRazer Europeの元副社長を務めていました。現在はTurtle BeachでPC製品のゼネラルマネージャーを務めているようですよ。
製品の特長
[Vulcan Pro]は2020年11月に発売された、オプティカル式のゲーミングキーボードです。
スイッチにはROCCAT独自の【Titan Switch Optical】が採用されており、早い反応速度と高い耐久性が特徴です。
後述する「キースイッチの構造」でも触れますが、オプティカル式を採用しているため各キーストロークがデバウンス遅延なしで認識されます。また、キー入力の接点が非接触式なので摩耗せず、1億回ものキーストロークに耐えられるスイッチを実現しているそうです。
デザインは既存のVulcanシリーズを踏襲しており、キーキャップは薄型軽量・筐体はアルマイト処理されたアルミニウムプレートに覆われています。
製品名 | Vulcan Pro |
型番 | ROC-12-536 |
キーレイアウト | 英語104キー |
スイッチ構造 | 光学式メカニカル [Titan Switch Optical] |
キーストローク | 2.8mm |
アクチュエーションポイント | 1.4mm |
押下圧(g) | 約45g |
ポーリングレート | 1000Hz |
スイッチ寿命/耐久 | 1億回 |
USBケーブル | 約1.8m |
キーボード寸法 | (W)462mm x (D)235mm x (H)32mm |
本体重量 | 1150g |
キースイッチの構造
従来のキースイッチ
キーボードをスイッチの構造で分類すると、一般に流通しているキーボードは大きく分けて3つに区分されます。
[メンブレン式]・[メカニカル式]・[静電容量無接点式]の3つです。
それぞれの構造にメリット・デメリットがあり、その違いは様々なサイトで解説されています。そのため、この記事では簡単な説明に留め、代わりに分かりやすい解説動画をご紹介します。
蜜柑製 – Labさんの『キースイッチの構造と違いを学ぶ(メンブレン 、パンタグラフ、メカニカル、静電容量無接点)』
まさに百聞は一見に如かず!分かりやすくまとまったナイスな解説動画です
メンブレン
メンブレン式のキーボードでは、3層のシートで構成された基板をベースに入力を行います。入力基板は上層・スペーサー層・下層に分かれており、キーを押したときに上層と下層が接触することで電流が流れ、入力が行われます。
そのため、入力を行う際はキーを底まで押し込む必要があります。
シートを上から押し込む構造上、耐久性はそこまで高くありません。さらに、入力基板がシート状でひとまとめになっているため、破損時はキーごとの部分修理は行えません。
そういったデメリットはありますが、このタイプのキーボードは価格が安いというメリットもあります。また、他の構造と比べて液こぼれには強いようです。
派生形として、入力構造は変わらずにキー部分のみが薄型になったパンタグラフ式もあります。薄型かつ低コストなため、殆どのノートパソコンでこの方式が採用されています。
- 価格が安い
- 液こぼれに強い
- 薄型にしやすい (ノートパソコン向き)
- キーの耐久性が低め
- 部分修理は不可(買い替えが必要)
- 入力には底まで押し込みが必要
メカニカル
メカニカル式のキーボードでは、1つ1つが独立したキースイッチをベースに入力を行います。キーを押し込むことで内部回路の接点が接触し、入力が行われます。
そのため、接点の位置次第ですがキーを底まで押し込まなくても入力が可能です。この接点を[アクチュエーション ポイント]と言います。
キー内部にはバネが設置されており、押したキーはバネの反発によって元の位置に戻るようになっています。このようなキー構造になっているため、製造コストが高く売値も高いです。
また、接点部分が接触する際にON/OFFが高速で繰り返される、いわゆる[チャタリング]が起こる可能性があります。チャタリングが生じると、[あ]と一回入力したはずが[ああ]と意図せず複数回入力されてしまいます。
そういったデメリットはありますが、このタイプのキーボードはキーの耐久度が高いといったメリットもあります。また、キー1つ1つが独立しているため、故障内容によっては部分修理が可能です。そのため保証期間もメンブレン式と比べると長めなことが多いようです。
さらに、メンブレン式と違いスイッチの底部分にはバネしかないので、打鍵感がよいです。カタカタという打鍵音は人によって好みが分かれますが、バネの反発具合を調整することで音を抑えたモデルもあります。これらは[青軸]や[茶軸]といった軸タイプで分類されており、「好みな打鍵感の軸を選ぶ」のも楽しみの1つです!
- キーの耐久性が高め
- キーごとの部分修理も可能
- 打鍵感がよい
- 底まで押し込まなくても入力可能
- 価格が高い
- 液こぼれに弱い
- 軸タイプによっては打鍵音がうるさい
- チャタリングが起こる可能性あり
静電容量無接点
静電容量無接点式のキーボードでは、スイッチ内部のスプリングが変形することによって生じる静電容量の変化をベースに、入力を行います。キーを押し込むと静電容量が変化し、その数値が一定値を超えたことが検知されると入力が行われます。
そのため、メンブレン式やメカニカル式のような入力の接点はありません。
接点がないのでチャタリングは生じず、摩耗も抑えられるので耐久性が高いという特徴があります。その信頼性の高さからATMなどのテンキーには、静電容量無接点式のものが採用されています。
また、閾値を調整することで、キーをどれくらい押し込んだら入力判定になるのかを調整することも可能です。東プレのREALFORCEシリーズでは、「アクチュエーションポイントチェンジャー」という機能で実際に調整ができるようですよ。
静電容量無接点式は機能的に優れていますが、その分価格も高いです。また、このタイプのキーボードを製造しているメーカーはさほど多くなく、全体の製品数も他の構造と比べるとかなり少なめです。
- キーの耐久性が高め
- キータッチが軽く、指への負担が少ない
- 底まで押し込まなくても入力可能+調整もできる
- チャタリングが発生しない
- 価格が高い
- 液こぼれに弱い
- メーカーや製品の選択肢が少ない
新型?オプティカル(光学)式
さて、いよいよオプティカル(光学)式のキーボードについてです。
この方式では、光に変換された信号をベースに入力が行われます。キーを押し込むことで光の遮断・通過が切り替わり、その信号を元に入力が検知されます。
メンブレン式やメカニカル式のようなキー入力の接点はありません。そのため、静電容量無接点式と同様にチャタリングは発生せず、摩耗も抑えられるのでキーの耐久性が高いという特徴があります。
また、チャタリングの心配がないので[デバウンス遅延]もなく、他の構造と比べてオプティカル式は入力時の反応速度が速いといった特徴もあります。
多くのメカニカル式キーボードでは、チャタリングを防ぐため入力検知をあえて少しだけ遅らせる[デバウンスタイム]が設定されています。このデバウンスタイムの分だけ入力に遅延が生じますが、オプティカル式はそもそもデバウンスタイムが必要ないため、反応速度が速いようです。
キーの構造はメカニカル式と同じで、押したキーはバネの反発によって元の位置に戻るようになっていますので、打鍵感はメカニカル式と変わりません。
静電容量無接点式とメカニカル式の良いとこ取りをしたような性能ですが、やはり価格は高めです。また、最近登場したばかりの構造だからか製品種類もそれほど多くないようです。
- キーの耐久性が高め
- チャタリングが発生しない
- デバウンス遅延がなく、反応速度が速い
- 打鍵感がよい
- 価格が高い
- 液こぼれに弱い (?)
- メーカーや製品の選択肢が少ない
実際の使用感
ここからは、[Vulcan Pro]の使用感についてレビューしていきます。
まだ購入して日が浅いため、耐久性については言及しておりません。予めご了承ください。
打鍵感について
[Titan Switch Optical]には、タクタイル(茶軸)とリニア(赤軸)の2種類が用意されています。
今回私が購入したモデルは、リニア(赤軸)タイプです。
リニア(赤軸)はアクチュエーションが1.4mm・キーストロークが2.8mmと、入力が比較的浅めな仕様になっています。
赤軸なのでカチャカチャといった青軸のようなクリック感はありませんが、ストンとした底打ち感は結構あります。
押下圧は他の赤軸同様に45gと軽めで、押し込むと滑らかにキーが降りていきます。
軽めな押し方でも入力されますが、キー同士の間隔が6mmほど空いているため、誤って隣のキーを入力してしまうことは殆どありません。ちなみに、キートップの中央から中央までを測るキーピッチは約18mmでした。
ホームポジションの[F]と[J]のキーに加えて、[W]キーにも突起がついています。また、[Shift]や[Space]などの長めのキーには、両端に補助のバネが設置されているため、端っこを押しても引っ掛かりを感じることはなく、スムーズな入力ができます。
長時間タイピングやゲームを行っていても、指が疲れにくい滑らかな打鍵感です。
イルミネーション機能
Vulcanシリーズは、イルミネーション機能にもこだわりがあるようです。
各スイッチにLEDを配置して、ゲーミングデバイスではお馴染みの1680万色を表現しつつ、その発光を透明なスイッチハウジングが良い感じに拡散しています。
キートップだけが光るのではなく、スイッチの土台まで光るので、全体的に明るくて発色がきれいです!
ROCCAT公式のデバイス管理ソフト【Swarm】を導入することで、キーボードの発行パターンを変更することができます。他のROCCATデバイスと発光パターンを同期させたり、[テンキー]や[WASD]の部分のみを光らせたりといった調整も行えるようです。
ただ、設定を反映させるためにはSwarmを常時起動させておく必要があります。Swarmが起動していない(導入していない)状態ではデフォルトの発行パターンのみです。
その場合でも、キーボード右上の[FX]キーを押してホイールを回転することで、明るさの調整&消灯は行えます。
最後に
今回は、オプティカル(光学)式キーボードの仕組みや特徴について、実際に購入したROCCATの[Vulcan Pro]と併せてご紹介しました。
正直、キーの耐久性については1億回や5,000万回といった限界を迎える前に、液こぼれやセンサー不調など他の要因で不具合が生じそうな気がします。
そのため、オプティカル式の一番の魅力は、チャタリングが生じない&入力時の反応速度が速いといった点なのではないでしょうか。
コアなゲーマーにとって、チャタリングや入力遅延は気になるポイントですからねー
これからキーボードを買い替える予定のある方は、ぜひオプティカル式の物もチェックしてみてください。
それでは!
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