今回は、Fractal Designから発売されているPCケース【Torrent】についてのお話です。
使用感や組み立て方についてのレビューは、他のサイトさんでも沢山取り上げられています。そのためこの記事では、Torrentの3連ボトムファンに注目してレビューを行います。
最近のハイエンドグラボは発熱が凄いですよね。
GPUやVRAMは高温になるので、熱対策をしっかり行いたいところです。
そこで今回は、3連ボトムファンがどれくらいGPU温度に影響するのか、回転数を変更しながら確認を行いました。ぜひお付き合いください!
Torrentの3連ボトムファンでGPUはどれほど冷やせる?【Fractal Design】
Torrentとは
Fractal Designについて
Fractal Designは、「製品品質・機能性・価格的なコスト面を妥協せずに、さらにデザイン性の優れた製品を提供する」ことをコンセプトにしている、スウェーデン発のPCパーツメーカーです。
2007年に設立し、主にPCケースやファン・簡易水冷式のCPUクーラーなどを製造・販売しています。
その中でも代表的な製品は、PCケースの【Defineシリーズ】です。価格.comの[PCケース 人気売れ筋ランキング]ではFractal Design製品をよく見かけるなど、日本でも人気の高いメーカーとなっています。
製品の特長
[Torrent]は2021年8月27日に発売された、エアフロー重視なフルタワー型PCケースです。
製品コンセプトは『エアフロー全開、妥協なし。』
コンセプトに偽りはなく、フロントに180mmファンを2基、ボトムに140mmファンを3基、標準搭載しています。特にフロントの180mmファンx2が特徴的で、口径の大きなファンが最大153.7CFMものエアフローを生み出しています。背面にファンを設置しなければ吸気オンリーとなりますが、それでも十分にケース内を風が抜けていきます。
公式サイト記載の製品仕様は下記のとおりです。
型番 | FD-C-TOR1A-02 |
ケース寸法 (LxWxH) | 544 x 242 x 530 mm |
前面ファン | 3x 120/140 mm or 2x 180 mm |
背面ファン | 1x 120/140 mm |
底面ファン | 3x 120/140 mm or 2x 180 mm |
前面インターフェース | 1x USB 3.1 Gen 2 Type-C 2x USB 3.0、HDオーディオ |
対応マザーボード | E-ATX / ATX / mATX / ITX / SSI-EEB / SSI-CEB |
CPUクーラーの最大高 | 188 mm |
前面ラジエーター | 最大 360/420 mm |
背面ラジエーター | 最大 120/140 mm |
底面ラジエーター | 最大 360/420 mm |
電源種類 | ATX |
正味重量 | 11.1 kg |
ボトムファンの回転数とGPU温度の比較
さて、エアフロー重視な[Torrent]ですが、冷却性能は如何ほどでしょうか。
余談ですが、このケースを購入する前はNZXTのH510を使用していました。画像のようにギッチリ詰めた構成で運用していましたが、夏場は排熱が間に合わず、ゲーム中のVRAM温度が90℃以上になることが多かったので買い換えました。
動作環境
CPU | Ryzen 5950X |
Cooler | NH-D15 chromax.black |
M/B | MEG X570 UNIFY (7C35vAB) |
RAM | KD4AGU880-36A180U |
GPU | RTX 3080 Ti SUPRIM X 12G |
ストレージ | CSSD-M2B1TPG3VNF (1TB) Samsung 980 (1TB) |
電源 | LEADEX V Gold PRO (1000W) |
OS | Windows 11 (22000.376) |
今回検証を行う環境は、表のとおりです。
[Torrent]のボトム3連ファンについて、付属の140mmファン[DYN-X2-GP14-PWM]を、Thermaltakeの140mmファン[TOUGHFAN 14CL-F118-PL14BL]に変更しています。
理由としては、TOUGHFANが3つ余っていたのと、こちらは四隅にラバークリップが装着されていたからです。カタログスペックも付属品より若干勝っているようですので「せっかくだし載せておこう」といった軽い理由です。
製品名 | サイズ | 最大回転数 | 最大風量 | 最大ノイズ |
TOUGHFAN 14CL-F118-PL14BL | 140mm | 2000rpm | 119.1CFM | 33.2dB |
FD-FAN (付属x3) DYN-X2-GP14-PWM | 140mm | 1700rpm | 105.9CFM | 33.7dB |
FD-FAN (付属x2) DYN-X2-GP18-PWM | 180mm | 1200rpm | 153.7CFM | 35.4dB |
ただ、後ほど結果にも出てきますが、正直ボトムファンは何でも良いと思います。
もちろん付属品でも十分です。
検証方法
検証方法は、ボトムファン3つを[800rpm]と[2000rpm]に固定した2パターンで、それぞれFF15ベンチをループ再生で30分ほど実行し、その様子を【HWiNFO】でモニタリングします。
このベンチは1周6分ですので、5周目が終わり30分経過した時点でのHWiNFO上の数値を比較します。
なるべくグラフィックボードに負荷を掛けるため、ベンチマークは[高品質]・[3840×2160]・[フルスクリーン]にて実施しました。また、開始時点の室温は1回目・2回目でなるべく近くなるよう調整し、HWiNFOもPC起動時から一定のタイミングで計測リセットをかけ、その直後にベンチマークを実行しています。
結果:回転数低めでもグラボは十分に冷える
最大温度 | CPU | GPU | GPU Memory | GPU Hot Spot | System | VR MOS | Chipset |
800rpm | 55.6℃ | 69.7℃ | 82.0℃ | 82.0℃ | 39℃ | 36℃ | 44℃ |
2000rpm | 58.3℃ | 68.6℃ | 82.0℃ | 81.3℃ | 30℃ | 38℃ | 39℃ |
平均温度 | CPU | GPU | GPU Memory | GPU Hot Spot | System | VR MOS | Chipset |
800rpm | 48.3℃ | 67.9℃ | 77.4℃ | 79.5℃ | 37℃ | 35℃ | 43℃ |
2000rpm | 51.0℃ | 67.1℃ | 76.9℃ | 79.0℃ | 28℃ | 35℃ | 37℃ |
結果は、上記画像と数値を抜粋した表のとおりです。
ボトムの3連ファンを[800rpm]と[2000rpm]で固定した場合、グラフィックボード関連の温度については、2パターンで大きな差は見られませんでした。[2000rpm]の方が最大温度・平均温度ともに低くはありますが、それでも差は概ね1℃以内に収まっています。※[GPU Memory Junction Temperature]の項目がVRAM温度に該当します。
CPU温度については、[800rpm]と[2000rpm]で固定した場合、[800rpm]の方が最大温度・平均温度ともに2.7℃ほど低い結果となりました。ボトム3連ファンの回転数を上げると、グラフィックボードの排熱がCPUクーラー側に伝わってしまうようです。そのため、CPUソケット周りに配置されているVR MOSの最大温度も、[2000rpm]の方が2℃ほど高い数値になっています。
逆にChipsetとSystemの温度については、[2000rpm]の方が冷えています。その差は大きく、Chipsetについては最大温度で5℃・平均温度で6℃の差が生じており、Systemについては最大・平均ともに9℃の差が生じています。
Chipsetの位置は、画像[旧構成:NZXT H510]で確認できる通り、グラフィックボードの少し下に配置されています。そのため、ボトム3連ファンからの風量が多くなれば、それだけグラフィックボードの排熱から受ける影響が少なくなるようです。
Systemの温度センサーは、マザーボードのどこにあるのか正直分かりませんが、温度差を見るにグラフィックボードが刺さっているPCIeスロットの近くにあるような気がしています。
結果をまとめると、ボトム3連ファンの回転数を上げても、グラフィックボード関連の温度はさほど下がりません。それ以外の項目では、マザーボード下部に配置されているChipsetなどは冷えるようになりますが、上部にあるCPUやVR MOSなどの温度は上昇します。あと余談ですが[2000rpm]はさすがに騒音がひどいですね(´·ω·`)。
最後に
今回は、3連ボトムファンがどれくらいGPU温度に影響するのか、回転数を変更しながら確認を行いました。結果は、回転数を変えてもさほどGPUの温度に変化はありませんでした。つまりボトムの3連ファンは回転数低めでも、グラボは十分に冷えているようです。
フロントファンの効果もあり、熱気がケース内に籠らず、しっかり外へ排出されていることが確認できました。
まさに 『エアフロー全開、妥協なし。』 なケースですね。
ボトムは回転数低めで固定し、フロントとCPUクーラーのみ負荷に応じて回転数を変動させる調整が、エアフローを重視しつつも静穏性もある程度得られる、良い塩梅です。
それでは!
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