今回はRTX30xxシリーズの電源管理モードについてのお話です。
先月、近々発売予定なRTX 3090 Ti SUPRIM Xのスペックがリークされ、TDPが480Wで推奨電源も1000W以上になっていることが話題になりました。
性能向上と共に、消費電力もどんどん上がっていくグラフィックボード界隈ですが、そろそろゲーマーに主流な電源管理モード「パフォーマンス最大化を優先」は非推奨になるべきだと思います。
NVIDIAコンパネ設定について検索すると、多くのサイトで「電源管理モードは[パフォーマンス最大化を優先]にしましょう」と紹介されていますよね…
そこで今回は、電源管理モードは[標準]が推奨な理由についてご説明します。
新SUPRIM Xのスペックやベンチ情報ではなく、電源管理モードが主題ではありますが、是非お付き合いください!
グラボの電源管理モードは標準推奨?! 新SUPRIMのTDPを見て思うこと
RTX3090Ti SUPRIM Xのスペックリークについて
近々発売予定なRTX 3090 Ti SUPRIM Xのスペックがリークされました。
その情報によると、新しいRTX3090Ti SUPRIM XはTDPが480Wまで上昇し、推奨電源も1000W以上となっているようです。
ベースクロック1560MHz・ブーストクロック1880MHz・Extreme Modeのクロック1900MHzで動作するようで、ノーマルのRTX3090Tiよりブーストクロックが引き上げられています。
ちなみに、同じ【MSI SUPRIMシリーズ】でTDPを比較すると、3090が420W・3080Tiが400W・3070Tiが310Wです。
ハイエンドになればなるほど、消費電力がどんどん上がっていきますね
詳しいリーク内容が気になる方は、下記の参考記事をご参照ください。
RTX30xxシリーズの電源管理モードは[標準]推奨
なぜ[パフォーマンス最大化を優先]ではなく[標準]なのか
電源管理モードが[標準]推奨な理由は、アイドル時の消費電力に大きな差があるからです。
[パフォーマンス最大化を優先]の設定にすると、負荷のないアイドル時でもGPUコアやメモリのクロックが下がりません。その分だけ[標準]と比べて消費電力が高くなり、グラフィックボード全体の温度も常に高くなります。
実際に2つの設定でどれくらいの差が生じるのか、【RTX3080Ti SUPRIM X】を例に【HWiNFO】でモニタリングした内容をご紹介します。
なお、その他の動作環境は下記のとおりです。
CPU | Ryzen 5950X |
Cooler | NH-D15 chromax.black |
M/B | MEG X570 UNIFY (7C35vAC1) |
RAM | KD4AGU880-36A180U |
GPU | RTX 3080 Ti SUPRIM X 12G |
ストレージ | CSSD-M2B1TPG3VNF (1TB) Samsung 980 (1TB) |
電源 | LEADEX V Gold PRO (1000W) |
OS | Windows 11 (22000.493) |
アイドル時の消費電力を比較
平均値 (画像より抜粋) | システム 全体 | CPU 消費電力 | GPU 消費電力 | GPU クロック | GPU温度 | VRAM温度 |
パフォーマンス | 222W | 44W | 123W | 1830MHz | 58℃ | 65℃ |
標準 | 125W | 42W | 35W | 210MHz | 40℃ | 44℃ |
[NVIDIAコントロールパネル]の[3D設定の管理]より、[電源管理モード]を[パフォーマンス最大化を優先]にした場合と、[標準]にした場合のアイドル時の消費電力を比較しました。
それぞれPCを起動してから5分間放置し、その後【HWiNFO】を立ち上げて、アイドル時の状態を5分間計測しました。
画像左下の赤背景部分は、コンセント側のワットチェッカーで計測した、システム全体の消費電力です。
アイドル時のGPU平均消費電力を確認すると、[標準]が35Wなのに対して、[パフォーマンス最大化を優先]だと123Wになっていますね…
単純に差し引きすると、[標準]と比べて[パフォーマンス最大化を優先]の設定は、GPUの平均消費電力が88Wほど多くなっています。その理由は、赤枠で囲った[GPU Clock] や[GPU Memory Clock]がブーストクロックで固定されているからです。
[標準]の設定では、負荷がないアイドル時のGPUクロックは210MHz、GPUメモリクロックは101MHzまで下がっています。
一方、[パフォーマンス最大化を優先]の設定では、GPUクロックは1830MHz、GPUメモリクロックは2375MHzで固定されています。
この違いにより、負荷が掛かっていないアイドル時でも、消費電力に大きな差が生じているようです。
GPUやVRAM温度が高い状態なのも気になります…
これは3080Tiに限った話ではなく、消費電力に差はあれどRTX3060やRTX3070でも同じ傾向にあります。
最近のグラフィックボードはコア数が増え、動作クロックも高くなり、ミドルクラスでもそこそこなTDPになっていますよね。そういった状況下で、従来のオススメどおり[パフォーマンス最大化を優先]に設定し、常に高クロックで動作させ続けるのは得策ではないように思えます。
PCでゲームしかしないのであれば、[パフォーマンス最大化を優先]でもいいかもしれません。
しかし、Youtubeを見たり調べごとをしたり、他の用途でPCを活用している時間がそこそこある場合には、この設定だと正直、無駄な電力を消費しています。さらに、グラボ全体の温度も常に高い状態になっているため、パーツ寿命も縮まります。
ちなみに、ベンチマークで比較すると[パフォーマンス最大化を優先]と[標準]では、スコアに殆ど差はありませんでした。
FF15ベンチマークの結果を比較
上の画像は、[電源管理モード]を[パフォーマンス最大化を優先]にした場合と、[標準]にした場合のFF15ベンチ結果です。4K画質の高品質プリセットにて計測を行っております。
結果は標準の方が若干高い数値になっていますが、正直誤差の範囲だと思います。
このベンチマーク中も【HWiNFO】を立ち上げて、モニタリングを行いました。
最大値 (画像より抜粋) | システム 全体 | CPU 消費電力 | GPU 消費電力 | GPU クロック | GPU温度 | VRAM温度 |
パフォーマンス | 597W | 126W | 399W | 2025MHz | 73℃ | 84℃ |
標準 | 590W | 122W | 398W | 2010MHz | 73℃ | 84℃ |
それぞれ最大値を比較すると、グラフィックボードの項目では[パフォーマンス最大化を優先]・[標準]共に同じような数値になっています。2つの設定で、スコアやブースト時のクロックに大きな差は生じていませんでした。
”パフォーマンス重視”と”標準”でスコアに大した差がないのであれば、アイドル時の消費電力まで上がってしまう[パフォーマンス最大化を優先]を選ぶメリットは薄いですよね。
このことから個人的には、電源管理モードは[標準]が推奨です。
最後に
今回はRTX30xxシリーズの電源管理モードについての内容でした。
現在は多くのサイトで「電源管理モードは[パフォーマンス最大化を優先]にしましょう」と紹介されていますが、RTX30xxシリーズ以降のグラフィックボードであれば[標準]設定の方が適していると思います。
[標準]はパーツにも優しい設定ですからね
もし気になる方はご自身の環境でも、それぞれの設定でベンチを走らせたり、【HWiNFO】などでアイドル時の電力をモニタリングしてみたり、実際にご確認いただけますと幸いです!
それでは!
コメント
俺もそう思いました。気になることが解消できました。
有難う御座いました。